目次
「第九」の合唱練習 1 237小節 ~ 240小節
■237小節~240小節の合唱部分 バリトンソロの「Freude」に続いて、 合唱バスが「Freude」を歌います。 ※テノールが参加することもあります。
食いつきが遅れる
①食いつきが遅れる原因 216小節から始まる バリトンソロのレチタティーヴォは、 舞台上で長い間待っていた後に発する 第一声であること、 音域が広い事などにより、 大変に難易度が高く、 ソリストも大変な緊張の中、 歌いだします。 そのため、良く起こることですが、 236小節までの大変な個所を歌い切った後、 ホッとする方も多く、 237小節からの「Allegro assai」 の テンポに少し遅れがちになることが、 多くあります。 ※まだ、経験の浅いソリストの場合、 ホッとして、「Freude」を 落としてしまったという話もよく聞きます。 ソリストの歌を聴いて出ようとすると 合唱も遅れてしまいます。 解決方法としては、 ソリストの声をきっかけにするのではなく、 オーケストラ(稽古の時はピアノ) のテンポを聴きながら、 指揮者の棒をしっかり感じて、 出られる訓練をして行くと良いと思います。 特に、舞台上では、指揮者、オーケストラ、 ソリストとの距離がある為、 音を聴いてから出ると遅れてしまいます。 指揮者を見て歌うトレーニングが必要です。
声にテンションがない
②声にテンションがない原因 また、 「今回のソリストはどうかな!!」 みたいに、 ソリストの歌をお客様の感覚で聴いていると 演奏者側として心の準備ができなくなり、 テンポにも乗り遅れてたり、 テンションのない単色の声に なってしまいます。 解決方法としては、 バリトンソロの言葉や音楽に共感して、 演奏者側としてのテンションを 高めておく必要があります。
技術的な面での練習
③技術的な面での練習 「Freude」の「F」の子音を はっきり言おうとすると 「reu」の声が止まり、 響きがなくなり、 結果、声を押すことになります。 練習方法としては、 まずは、子音を発音せずに ♩ ♩ eu de と練習して、 その次に、「r」を付けて、 ♩ ♩ rr eu de その後に、「f」を柔らかく付けます。 その時に、顎が固くならない様に 注意が必要です。 ♩ ♩ f rr eu de ※アルファベットの表示の仕方は、 自分のイメージです。 という順番で練習をすると、 子音も遅れなくなり、 その結果、言葉もクリヤーになり、 母音も奏でられるようになってきます。 そして、 ♩ ♩ eu de の「eu」ですが、 丸い口の「O」形を作り、 二重母音の母音が変化する時、 顎を動かすのではなく、 舌の奥を上げて、 口腔の形を変えていくと、 発音も良くなり、 響きが揃ってきます。 「de」の「d」は、 舌先が歯の内側辺りを 一瞬、触ることによって作られますが、 舌を前にはじくと、乱暴になりますので、 舌をを戻す感じの方が上手く行きます。 「e」は、 音が飛び出ないように歌います。 ただし音程が下がらないように 気を付けなければなりません。 ■初心者は、舞台の感動を体験することが 一番素晴らしいことですので、 初めて、「第九」に参加するときは、 カタカナでも良いと思いますが、 「第九」にも慣れてきて、 少しでも進歩したい場合は、 アルファベットを上手く扱って、 トレーニングをしていくと、 歌うのが楽になってきます。
「第九」の合唱練習 2 257小節 ~ 264小節
■257小節~264小節の合唱部分 バリトンソロから、主題を引き継いで、 合唱が歌いだします。 この合唱部分は、 音程が低い箇所ですから、力むのではなく、 美しい響きで、フレーズを作り、 長母音の単語に 上手くアクセントが落ちていくと 歌いやすくなりますし、 曲の形がきれいになってきます。
Deine Zauberの歌い方
①Deine Zauberの歌い方について、
やはり前のバリトンのソロを
ギリギリまで聴いていると、
食いつきが遅くなります。
歌いだす2小節前位には、
ゆっくりと息を吸い始めて、
喉、口腔、胸を広げて、
Deine Zauberと歌いだすと、
フレーズを作りながら、
歌うことができます。
「Deine」の「D」は、
舌先が歯の内側辺りを
一瞬、触ることによって作られますが、
舌を前にはじくと、乱暴になり、
母音が割れますので、
触った舌を戻す感じの方が、
口の中の空洞を保て、
次の母音が奏でられやすくなります。
「Deine」の「i」は、
あまり狭くしないで、
「a」の口腔を保ちながら歌うと
美しい響きが保たれます。
「Zauber」の「au」は、二重母音です。
「アウ」ではなく「アオ」のイメージで
歌った方が、口腔の形も保て、
ドイツ語に近くなります。
テノールの跳躍
②テノールの跳躍は、
難易度が高い箇所です。
同じ口の形のまま跳躍をしようとすると、
音が詰まってきますので、
一回一回、顎の緩みを作って、
口腔の形を変えて跳躍をしていくと、
歌いやすくなります。
ゆっくりとしたテンポで
母音唱をして声の通り道を作り、
その後、テンポに近づけていくと、
段々処理ができるようになります。
低い音は、他のパートが歌っていますので、
深追いして声が重くならない方が
良いと思います。
die Modeは、
③die Modeは、 閉口音で、長母音ですので、 開いた「o」ではなく、 閉じた「o」になります。 丸い口をして、 「Moode」 のイメージで歌うと良いでしょう。
streng geteilt; alleの処理
④streng geteilt; alleの処理ですが、 これは、指揮者のテンポにもよります。 テンポが早めの指揮者の場合、 「teilt」の低い音を深追いせずに、 瞬間的にブレスをして、 「alle」の「a」にアクセントを付けます。 テンポが遅めの指揮者の場合、 ブレスの為に「teilt」の低い音が、 短くならない様にして、 「alle」の「a」にアクセントを付けます。
八分音符のリズムと音程
⑤八分音符のリズムと音程 ♩ ♪ ♪ bin de - en was di - ie Brü - ü - der のように、 八分音符で母音を歌い直す とリズムや音程が聴こえてきます。 オーケストラは、 八分音符で動いていますので、 それを感じながら歌うと 動きやすくなります。 これもゆっくりと時間を掛けて 行うと良いでしょう。
Brüder の「ü」の歌い方
⑥Brüder の「ü」の歌い方 「Brüder」の「ü」のウムラウトを しっかり狙って歌うと良いと思います。 「Brüüder」 の様な感じでしょうか。
weilt.の語尾の処理
⑦weilt.の語尾の処理。
小節内に入れるか、次の小節頭に入れるかは、
指揮者の指示に従います。
フレーズのまとめ方と長母音
フレーズのまとめ方と長母音 文法的なまとまりに合わせて フレーズを作っていきます。 以下の四(又は二)グループにまとめ、 太字は、母音を長めに歌うと良いでしょう。 Deine Zauber binden wieder , was die Mode streng geteilt ; alle Menshen werden Brüder , wo dein sanfter Flügel weilt .
語尾の「er」の扱いについて
⑨語尾の「er」の扱いについて、 昔は「er」を歌詞として歌う時には、 ドイツ語を文語としてとらえて 語尾の「er」は巻き舌で歌っていましたが、 近年では口語のように巻き舌を使わず 標準語に近い発音で歌う方が 多くなってきました。 それ以外の「r」は、基本的には巻きます。 巻き舌が苦手な方は、少しずつ時間を掛けて できるように努力をすると良いと思います。
■語尾の「er」の扱いでのエピソード ※私ではありませんが、 優秀な指導者の下で起きた事件です。 長年、文語で「第九」で歌ってきた 合唱団員が参加している団体に、 指揮者からの要望で、合唱指導者が、 口語でドイツ語を教えたところ、 あの指導者のドイツ語は間違っていると 「第九」を担当している課に クレームをしたそうです。 相手は、アマチュアの合唱団なので、 最初に、説明していなかった指導者にも 落ち度はあったと思いますが、 上にクレームをあげないで、 指導者に直接言えばよいのにと思いました。 思い込みというのはとても怖いものです。 指揮者が変わることによって、文語から、 翌年、口語になることは多いのですが、 指導していて苦労するのは、 口に癖がついていますので、 直すのに時間が掛かります。
■「第九」はとてもエネルギーのいる曲です。
だからと言って、怒鳴ってしまい、
音楽を壊すようなことがない様に
気を付けましょう。
「第九」をちゃんと歌いきるには、
しっかりとした発声技術が入ります。
少しずつ、克服していく事です。
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